人口減少が進む中山間地域で、人の暮らしを支えてきた里山が荒廃し、野生動物がじわじわと勢力を広げています。鳥取県日南町では、牛舎の飼料がイノシシに食い破かれたり、放置された家屋に小動物がすみ着いたりと、住民の生活のすぐそばまで被害が迫っています。
7月中旬、鳥取県西部の3つの町と県などが2014年に設立した「日野郡鳥獣被害対策協議会実施隊」の高野伸也さん(37)と稲田耕大さん(31)が、日南町にある畜産農家の牛舎を訪れました。この牛舎には大型のイノシシとウリ坊5頭ほどの群れが出没し、軒下に置かれた飼料の袋が食い破かれていました。隊員らは設置された2箇所の箱わなを点検し、えさの米ぬかを補充しました。隊のチーフを務める高野さんは、「牛舎には生まれたばかりの子牛もいるので、生産者は気が気ではないだろう。早く捕獲できるといいのだが」と語りました。
9月中旬には、広島県境に近い日南町内の別の集落へ向かいました。もともと11世帯あったこの集落は現在6世帯に減り、放置された家屋にイタチやテン、タヌキなどがすみ着いていました。集落で暮らす青戸英一さん(70)は「夜になると家の中に入ってきて天井裏を走り回る。眠れないし、何とかしてほしい」と訴えます。隊員らは動物を誘い込むため、甘いスナック菓子を入れた小型の箱わなを廃屋のそばに仕掛けました。
鳥取県内では近年、シカによる農作物の被害に対しても警戒が強まっていますが、ハンター不足で対策が追いつかない状況が続いています。人口減少によって里山と野生動物の境界があいまいになるなか、地域の暮らしと安全をいかに守るかが切実な課題となっています。