テレビ放送の字幕を利用する人にとって、話された言葉がどれほど正確に画面へ表示されるかは大きな関心の対象だ。新しく登場したオープンソースのシステム「早耳(Hayamimi)」は、画像処理などに使われるGPUやクラウドAPIに依存せず、パソコンのCPUだけで軽快に動く。必要なメモリも2ギガバイト未満に抑えられているが、実際のテレビ放送の日本語音声を対象にしたテストで「文字誤り率3.8%」という高い精度を記録した。
これまでCPUだけで音声を認識する方式は、一つの大きなモデルに頼ることが多かった。しかし「早耳」は、話した言葉ごとに言語を判定し、それぞれの専用モデルに振り分ける独自の手法を採用している。モデルはINT8量子化されたONNX形式で、sherpa-onnx上で動くため、PyTorchやCUDAのような環境は必要ない。6コアのデスクトップCPUでは、実際の時間の10倍から50倍の速度を実現している。発話の途中でも約0.5秒ごとにドラフト字幕が更新され、話し終えてから約100ミリ秒で確定した文章を出力する。
「早耳」は、リアルタイムで文字を表示するだけでなく、配信や実務に便利な機能も備えている。日本語や英語、中国語など多くの言語をカバーし、指定した言語へのリアルタイム翻訳や、話している人を区別する話者ラベル付けにも対応する。また、2秒の無音の後に直前の発話をもう一度処理して「清書」する二段パス補正の機能もあり、より正確な記録を残すことができる。さらに、ライブ配信ソフトのOBSに字幕を重ねて表示できるオーバーレイや、ブラウザで状況を確認できるダッシュボードも備わっている。
一方で、いくつかの制限も存在する。1つの文の中に複数の言語が混ざる発話には対応しておらず、2人が同時に話した声を分けることもできない。また、効果音やBGMの直後にある短い発話では言語の判定を誤るおそれがあるほか、小型モデルによる翻訳では数値や金額のミスが起こる可能性もある。それでも、日本語と英語だけに絞れば約1.1ギガバイトの構成でも動くため、特別なGPUを持たない個人でも、手元のパソコンでリアルタイムの字幕を手軽に使うことができる。