企業の採用活動で人工知能(AI)による履歴書の自動審査が普及する中、AIの判断を不正に操作する「プロンプトインジェクション」が実際の就職活動で広がりを見せています。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校やデューク大学、カリフォルニア大学バークレー校などの研究チームが発表した調査によると、提出された履歴書の約100通に1通の割合で、人間の目には見えない隠し文字が忍ばせられていたことが明らかになりました。
研究チームは、採用支援プラットフォームから提供された計19万6682件の履歴書データを分析しました。分析対象には、2019年7月から2025年12月まで、および2024年7月から2025年11月までのデータが含まれています。チームが新に開発した検出システムで調査を行ったところ、全体の約1%にあたる2030件から、悪意を持って隠された不正テキストが検出されました。セキュリティ分野の国際会議「USENIX Security Symposium 2026」で論文「Measuring Real-World Prompt Injection Attacks in LLM-based Resume Screening」として報告されています。
使われていた手口は、文字の色を背景と同じ白色に設定したり、人間には読めないほど極端に小さな極小フォントを使用したりするものでした。これにより、人間の採用担当者には気づかれずに、文書を解析するAIシステムにだけ特定の指示や情報を読み込ませることが可能になります。改ざんの内容で最も多かったのは、スキルのキーワードを見えない文字で羅列する手法でした。次いで虚偽の職歴や実績を記載するケースが多く、中には求人票の応募要件をそのまま丸写しする事例も確認されています。
自動選考システムの普及に伴い、就職活動における優位性を得ようとする応募者側の手法が常態化しつつある現状が浮き彫りとなりました。従来、プロンプトインジェクションはセキュリティ上の脅威として理論的に懸念されていましたが、今回の実態調査により、一般の採用現場においてすでに広く実行されている攻撃手段であることが証明された形です。AIを活用した選考プロセスを導入する企業側には、テキストの抽出ロジックの改善や、不可視データの検知機能を組み込んだ新な対策が強く求められています。