大手企業や教育機関に対する不正アクセスが相次ぎ、パスポートや運転免許証といった重要な個人情報が流出する異例の事態が広がっている。旅行サイト「スカイチケット」を運営するアドベンチャーで約1400万件、エイチ・アイ・エスで最大627人分のパスポート情報が流出した可能性が判明した。さらにブックオフで最大643万件、ローソンで215万件以上、第一興商で約872万件の流出の恐れが明らかになるなど、被害の規模は拡大を続けている。
サイバー攻撃の影響は日常の生活や学びの場にも直接及んでいる。大阪公立大学ではシステム障害により授業が1週間休講となり、在学生や受験生ら少なくとも13万件の個人情報が漏えいした恐れがある。また食品大手ニッスイのグループ会社「日水物流」でも障害が発生し、スーパーで冷凍食品の入荷が一時滞おるなどの混乱が生じた。事態を重く見た政府は対策会議を実施し、国家サイバー統括室に情報を集約するとともに、企業に対してシステムの脆弱性対策や認証機能の強化を求めている。
万が一情報が流出した場合、管理する企業はどのような法的責任を負うのだろうか。元大阪地検検事の亀井正貴弁護士によると、企業には損害賠償責任が生じる可能性があり、流出した情報の内容によって補償の相場が大きく異なるという。住所などの流出であれば5000円程度とされるが、運転免許証やパスポートといった公的書類の情報は悪用リスクが高まるため、精神的ショックも加味されて1万円から5万円程度になると解説する。さらに流出情報が悪用されて二次被害が生じた場合は5万円から10万円、実際に詐欺などで金銭的被害が発生し因果関係が証明できれば数千万円規模の賠償金が認められる可能性もある。
しかし、流出と被害の因果関係を個人で証明することは極めて難しいのが現実だ。一人で訴訟を起こせば弁護士費用などのコストが補償額を上回ってしまう問題もある。こうした中、個人情報が漏えいした「タイムズカー」を巡っては、被害者が集まって提訴を目指す集団訴訟の動きも出ている。高度化するサイバー攻撃に対し、大切なデータを預かる企業にはこれまで以上に高度なセキュリティ対策と誠実な責任が問われている。