人工知能(AI)で生成した楽曲と大量のボットアカウントを悪用し、800万ドル(約12億6500万円)以上のロイヤリティを不正に取得したマイケル・スミス被告に対し、18カ月の拘禁刑が言い渡されました。ニューヨーク南部地区の連邦検事が10月6日に発表したもので、スミス被告には2年間の保護観察処分と800万ドル超の没収金の支払いも命じられています。
検察の発表によると、スミス被告は数千のボットアカウントを運用し、仮想プライベートネットワーク(VPN)を経由させることでプラットフォームの不正検知を回避していました。ボットの作成には偽のメールアカウントや不正に入手したデビッドカードが用いられ、一度に最大1万ものボットで配信楽曲を合計数十億回も再生させました。2023年4月のYouTube Musicでの再生回数において、人気歌手テイラー・スウィフト氏の全曲合計が930万回だったのに対し、スミス被告の楽曲は8900万回に達していたとされています。
ストリーミングサービスでは、全体で集まった資金プールから再生回数に応じて報酬が分配されます。不正な手法で膨大な再生数を稼ぐ行為は、真面目に活動するアーティストの収益を直接奪うことになります。スミス被告は2024年に逮捕・起訴され、2026年3月に電信詐欺共謀罪で有罪を認めました。弁護側は「個別アーティストへの影響はわずかだ」として実刑の回避を求めましたが、検察側は「低賃金で働くクリエイターに損害を与えた悪質行為だ」と主張し、厳罰を求めていました。
判決を受け、ジェイミー・マクドナルド連邦検事は「被告は創造性の代わりに偽の楽曲を大量に送り込み、本物のアーティストから巨額のロイヤリティをだまし取った」と批判し、AIを悪用した詐欺から市場の健全性を守る姿勢を強調しました。また、全米レコード協会(RIAA)も声明を発表し、裁判所がストリーミング詐欺の重大性と被害の大きさを認めたことに感謝を表明しました。