スタジオジブリの設立40周年を機に、宮崎駿監督の作品が映し出してきた戦後日本の思想や自然観が改て注目されている。宮崎アニメの根底にあるアニミズム精神は、漫画界の巨匠・手塚治虫や哲学者の梅原猛といった知的巨人たちとの交錯を通じて、独自の深みへと発展を遂げてきた。
〜を機に= on the occasion of / taking ... as an opportunity〜を通じて= through / via (a process or interaction)発展を遂げる= to achieve/undergo development
幼少期に手塚作品から多大な影響を受けた宮崎だが、両者の自然観には決定的な相違が存在する。近代科学の合理主義や進歩主義を背景に、自然を人工的に加工・対象化できるものと捉えた手塚に対し、宮崎は『もののけ姫』などで人間が操作し得ない不気味な自然の姿を描き出した。
〜に対し= in contrast to / as opposed toVし得ない= cannot / is impossible to (do)〜と捉える= to view / perceive as
この対立する二人を結び付けたのが、戯曲『ギルガメシュ』を著した梅原猛である。手塚は同作のアニメ化を熱望しながらも急逝したが、後に宮崎は『もののけ姫』の制作過程で「森の神の殺害」というモチーフなど、梅原の思想から無意識に影響を受けていたことを自覚したという。
Vしながらも= even while / although
さらに宮崎は、照葉樹林文化論や縄文文化論、歴史学者・網野善彦の「網野史観」を取り入れ、漂泊者や非定住者、多元的な生命が共存する世界を表現した。近代的な人間中心主義を相対化するこの試みは、手塚から宮崎へと受け継がれた20世紀日本の精神史の一断面を示している。
〜を取り入れる= to incorporate / to adopt