タイでは、本名(正式な名前)とは別に、日常で使うニックネームを生まれた時から持ち、2つの名前で育つ人が多い。ニックネームには「バンク」「ビール」「ゴルフ」「アイス」といった身近な単語から、「ニューイヤー」「Gメール」「パンケーキ」のような個性的なものまで存在する。外務省の職員が仕事の連絡にニックネームを使うこともあり、社会に広く浸透している。
名付けの経緯は自由だ。ある28歳の会社員は、母親が妊娠中に遊園地でアイススケートを見たことがきっかけで、「アイス」というニックネームが先に決まり、正式な名前は後から僧侶に付けてもらった。その後、「アイス」という名前が周囲でありふれたものになったため、数年前に日本語風の発音である「アイスゥ」に呼び方を変えたという。
また、26歳のグラフィックデザイナーは、母親のニックネーム「ナームフォン(雨)」の「ナーム」と、生後3カ月を過ごした保育器「トゥーオップ」の「オップ」を祖父が組み合わせて「ナームオップ」と名付けられた。この名前は偶然にも、タイの正月(ソンクラーン)で仏像や年長者にかける香り水と同じ言葉になった。
タマサート大の言語学者、アヌチット・トゥーマニージンダー助教授は、「今は意味はそれほど重要ではなく、他の子と違う名前にしたいという考えが強い」と話す。最近は名前の響きや珍しさが重視される傾向があり、「パン」のような一般的なニックネームを「パンパン」と音を重ねて他の人と区別することもあるという。