米人工知能(AI)開発大手のOpenAIは9月21日、数学者らが設立した独立組織「AGMAI」と連携すると発表した。AIが数学の未解決問題を解き進めるなか、成果の評価や公表の規範について助言を受ける。同社は社内モデルがミレニアム懸賞問題である「ナビエ・ストークス方程式」を含む100件以上の未解決問題を解決したと主張しており、急速な進展への対応が迫られていた。
この背景には、AI企業の発表姿勢に対する数学界からの強い批判がある。9月11日、フィールズ賞受賞者らによる公開書簡が出され、AI企業が未解決問題の解決をベンチマークとして拙速に競うことは、論文化や先行研究の引用をおろそかにし、学術研究に有害だと指摘された。ナビエ・ストークス方程式の件でも先行研究の経緯を巡り論争が生じており、OpenAIは数学界との丁寧な対話が不可欠だと認識を示した。
米プリンストン高等研究所(IAS)に拠点を置くAGMAIは、ティモシー・ガワーズ氏やマルティン・ハイラー氏らフィールズ賞受賞者を含む9人の数学者で発足した。組織はOpenAIから完全に独立しており、同社からの報酬を受け取らず、助言内容や見解を独自に公開できる。ただし、社内の数学研究を進めるペース自体は助言の対象外とされている。また、AGMAIは意思決定の権限を持たず、判断の責任は企業側にあるとしつつ、他のAI企業への助言も行う意向を示している。
AGMAIは現在、OpenAIが社内モデルで得たとされる成果の公表手順について検討を進めており、数学界からの意見を募集している。AIの急激な進化が伝統的な学術規範と衝突するなか、AI企業と専門家共同体がどのような協働体制を構築できるかが注目されている。