ChatGPTのような対話型AIとは異なり、テキストやコードといった文章をまったく生成せず、与られた質問や選択肢への「判断」のみを構造化されたデータとして返す新しいAIモデル「Jev」(ジェヴ)が注目を集めている。開発した米スタートアップのTypeSafe AIによると、従来の大規模言語モデル(LLM)と比べて「20〜200倍速く、40〜1000倍安い」という。
Jevの創業者は、OpenAIでChatGPTの前身となる「InstructGPT」論文の共著者を務めたディオゴ・アルメイダ氏。同氏は、思考の働きを「直感的で速いシステム1」と「論理的で遅いシステム2」に分類する行動経済学の概念にちなみ、Jevを「System One モデル」と位置づけている。LLMが単語単位でテキストを順番に作り出すのに対し、Jevは事前に定義された型に沿った値を確率や確信度とともに一度に出力する。
入力できる処理は、最大255個の選択肢から1つを選ぶ「Choice」、指定した数値を返す「Score」、はい/いいえの確率を出す「Noul」の3種類。独自の学習手法「RLCD」により、確信度が高いほど実際の正答率も高くなるよう調整されている。開発者は確信度の基準を設定し、条件を満たさない複雑な判断のみをLLMや人間に振り分けるといった「スマートなif文」のような活用が可能になる。
同社の試算では、Jevの応答時間は70〜500ミリ秒とLLMの数秒〜数分に比べて圧倒的に速く、入力単価も100万トークンあたり0.042ドルと安価に抑えられている。自由な文字列を出力しないため、構造上「ハルシネーション(幻覚)」が発生しないと主張している。大量データの分類やAIエージェントの出力チェックといった自動化ニーズをどこまで満たせるか、今後の実用化に期待が寄せられている。