人工知能(AI)を使って仕事を効率化しても、働く時間が減らずに早く帰れないという悩みが広がっています。インターネットの投稿サイトでは、「AIで8時間の作業を4時間に縮めたら、残りの4時間に別の仕事が入っただけだった」という体験談がSNSで大きな話題になりました。AIによって作業が速くなっても、結局はより多くの仕事を任されるだけという現実が浮き彫りになっています。
IT大手のDeNA(ディー・エヌ・エー)の南場智子会長も、イベントの講演で「AIで工数(作業にかかる時間と手間)を6割から9割削れた業務があるものの、現場は自ら仕事をさらに詰め込んでいる」と語りました。また、パーソル総合研究所の調査によると、生成AIの利用によってタスク1つにかかる時間は平均16.7%短くなったものの、労働時間そのものを減らせた人は25.4%にとどまっています。
同研究所の田村元樹氏によると、浮いた時間が労働時間の短縮につながらない背景には、週40時間という労働時間の枠や業務の総量が見直されていないことがあります。個人の作業が速くなっても、周囲にAIの使い方を教えたり新しい業務を担当したりすることで、結果として仕事の全体量が増えて残業が発生するケースもあります。また、企業全体の生産性を見ても、AIで作業時間が減るだけでは生み出す価値が増えたわけではなく、他社との差別化も難しいため、簡単に働く時間を減らせない構造があると指摘されています。