現在私たちが使っているパソコンのキーボードには、「Insert」や「Delete」といった英語の文字が書かれています。しかし、かつてのキーボードには文字ではなく、操作の意味を表す絵や記号(アイコン)がデザインされていました。こうした記号の歴史について、ヴィハリ氏が調査した内容を紹介しています。
ヴィハリ氏によると、20世紀にはキーの機能を文字で示すか記号で示すかという地域ごとの考え方の違いがありました。文字による説明が多かったアメリカに対し、多くの言語が使われるヨーロッパでは、言葉の違いに左右されにくい記号が広く採用されました。記号を使えば、国ごとにキーボードの表示を変える手間を減らせるという利点があったためです。
1960年代から1980年代にかけて、IBMなどのコンピューターにはさまざまなアイコンが登場しました。たとえば「Print Screen」キーにはディスプレイから紙が出てくるような絵が使われ、画面の内容を印刷する操作を表現していました。また「Insert」や「Delete」には、文章の修正指示に使う校正記号から着想を得たとみられる独特な記号が描かれていました。
しかし、オフィスでパソコンを使う人が増えるにつれて、わかりにくい記号は姿を消し、文字での表記が主流になりました。Shiftの「⇧」やEnterの「↵」など、定着した記号はわずかです。それでも、消えていった記号の一部はISOの規格に由来する文字として、現在のUnicodeの中に記録として残されています。