声に出さず頭の中だけで言葉を使う「内言」は、自分の行動や感情をコントロールする働きに関わるとされています。筑波大学などの研究チームは、幼児が頭の中だけで言葉を使えるようになる目安が5歳ごろにあるとする研究結果を発表しました。従来、遊びながら自分に話しかける独り言が声に出さない形へ変わることで内言が生まれると考えられてきましたが、頭の中の出来事は外から観察できず、発達の過程を確認することは困難でした。
実験では、3歳から6歳の幼児77人と成人25人が1から5まで数えるタスクに挑みました。参加者はまず声に出して数える「外言条件」を5回行い、その後に頭の中だけで数える「内言条件」を5回行いました。タブレットのストップウォッチを使い、数え始める前と5まで数えた直後にボタンを押してもらうことで所要時間を計測しました。研究チームは、毎回ほぼ同じ時間で数えられるかをばらつきの指標である相対標準偏差(RSD)で比較し、観察や録画で声や指・唇の動きがないかも確認しました。
指示どおりに課題をこなせた幼児58人のデータを分析した結果、頭の中で数える場合の所要時間のばらつきは、月齢が高い幼児ほど小さくなる傾向が確認されました。一方、声に出して数える外言条件では月齢とばらつきの間に明確な関係は見られませんでした。また、声や指・唇の動きを使わずに頭の中だけで数えられた幼児の年齢の中央値は5歳6カ月だったのに対し、難しかった幼児の中央値は4歳5カ月でした。これらの結果から研究チームは、発達とともに内言が徐々に安定し、5歳ごろが頭の中だけで数えられるようになる目安になると考えています。
さらに研究チームは「人は頭の中で自分に語りかけられるか」といった質問で内言への理解も調査しました。「はい」と答えた割合は幼児で65.5%、成人で92%でしたが、幼児の回答と数える課題の成績に明確な関係は見られず、「頭の中で言葉を使えるようになることと、そのことを理解して説明できるようになることは必ずしも同時に進まない可能性がある」と指摘しています。なお、今回の研究は求められて頭の中で数える場合の内言を調べたものであり、日常生活で自然に浮かぶ言葉の発生時期を特定したものではないとしています。