野生のサルが木の実を割るとき、かつてほかの個体が使った「過去に使われた石」を優先して選ぶことが、国際的な研究チームによる実験で判明した。ほかの個体の行動を直接観察しなくても、石に残された痕跡が道具として役に立つという情報を伝える社会的学習の一種である可能性が示された。
研究チームは、ブラジルに生息するヒゲオマキザルの2つの集団を対象に3つの実験を行った。最初の実験では、まだだれも使っていない石を用意したところ、サルは木の実を置く台座には柔らかい石を、木の実を叩き割るハンマーには硬い石を選び、用途に合わせて的確に石の硬さを使い分けることが示された。
さらに研究チームが条件を変えて実験を進めたところ、サルは過去に道具が使われた場所や使用痕跡のある石を強く好むことが分かった。未使用の石と使用済みの石を同時に並べた実験では、台座として理想的な硬さでなくても「過去に使われた痕跡」がある石を優先して選ぶ傾向がみられた。
研究チームは「サルが硬さを基準に石を選ぶだけでなく、過去の痕跡を手掛かりにしている点は強力な社会的学習の現れだ」と分析している。また、この行動は初期のヒト族の進化や道具利用を解明するうえでも重要であり、大昔のヒト族も残された道具を「外部記憶」として活用し、素材の再利用を促されていた可能性があると指摘している。