傷病者を搬送する際、救急隊員が玄関で脱いだ靴の位置や向きを「そのままにしておいてほしい」という日本の消防士の呼びかけが、海外で大きな議論を呼んでいます。金沢市消防局の山下大輔氏によると、隊員は担架を支えたままスムーズに足を入れられるよう計算して靴を脱いでいます。もし住民が親切心から靴を整頓してしまうと、履き直すのに体感で約30秒の遅れが生じるほか、体が揺れて酸素マスクが外れる危険もあるといいます。
この話題は、イギリスの『ガーディアン』紙が2026年8月28日に報じたことで世界に広まりました。さらに9月3日、技術や社会ニュースを扱うウェブサイト「ハッカーニュース(Hacker News)」に投稿されると、180件以上のコメントが寄せられる反響となりました。ネット上の議論では、「緊急時でも室内で靴を脱ぐ文化を守るべきか」という点に関心が集まり、各国の習慣や安全基準の違いが明らかになっています。
例えば、オランダのユーザーからは「1秒を争う現場ではマナーより迅速な対応が優先されるべきだ」という声が上がりました。また、カナダやアメリカの現場では、足元を保護する安全靴やブーツの着用が義務付けられており、家の中に入る際も靴を脱がないのが一般的です。「911番(緊急通報)を呼んだ時点で床が汚れるのは仕方がない」という割り切った見方もあります。一方で、日本の「土足厳禁」は単なる床の保護ではなく清潔さという観念に関わるため、靴のまま上がられることに抵抗を感じる人もいると解説する投稿もありました。
海外のネット掲示板では「そもそも救急隊員が靴を脱ぐべきか」という論点に発展しましたが、日本の消防局が呼びかけているのは「靴を脱ぐこと自体」の議論ではなく、「隊員が置いた靴をそのままにしておいてほしい」という点です。山下氏は、靴を並べ替えてくれる住民の親切心には感謝を示しつつ、緊急時には靴よりも「患者本人のマイナンバーカードや身分証明書をあらかじめ用意してもらえると大変助かる」と話しています。