8月半ばの朝、静寂に包まれた山あいの本堂で、一人の少年が背筋をピンと伸ばして座禅を組んでいた。岡山県津山市にある善福寺で開かれた「子ども座禅体験会」の初日、参加したのは祖父と訪れた近くに住む小学2年生の少年一人だけだった。昨年は小中学生15人ほどが参加したが、「参加数はフタを開けないと分からなくて……」と住職の森定慈佑さん(37)は頭をかく。座禅が終わると、森定さんは「今日はご褒美独占じゃ」と笑って、少年にチューブ入りのアイスを三つ差し出した。
この体験会は、岡山県北部にある20の寺で構成する天台宗岡山教区第5部の有志で取り組む「寺活プロジェクト」の一環だ。「人が亡くなった時にだけ行く場所になってしまった寺の敷居を下げたい」と語る森定さんが代表を務め、一つ年下で観音寺(同県勝央町)の副住職、間庭円照さん(35)が事務局を担って2018年から活動している。東京の大学で出会った二人は、ともに20代半ばで故郷へ戻り、寺の運営に携わることになった。
森定さんは「若手が地域活性化のために何かしなければならないという思いがあった」と振り返る。プロジェクトが最初に取り組んだのは、「寺婚」と呼ばれる婚活イベントだった。そのきっかけとなったのは、「未婚の息子や娘に出会いの場を作ってほしい」という檀家からの要望だった。
過疎化や檀家の減少が進むなか、地方の寺院を継いだ若手僧侶たちは、葬儀の時にだけ訪れる場所になってしまった現状を変えようと奮闘している。座禅会の参加者が一人にとどまるなど現実の厳しさに直面しながらも、「寺の敷居を下げたい」という若手たちの模索は続いている。