「お神酒あがらぬ神はなし」という言葉があるように、日本の神様はお酒が好きだと言われています。約2000年前に米づくりが始まって以来、人々は新しくとれた米でお酒を造り、まず神様にささげて収穫に感謝してきました。そのお酒を人間も一緒に飲むことで、神様の力をもらって元気を取り戻すと信じられてきました。全国には、神様と人々が楽しくお酒を分かち合うユニークな「三大酒祭り」が今も受け継がれています。
岐阜県にある世界文化遺産の白川郷では、秋に「どぶろく祭」が開かれます。「どぶろく」とは、白く濁った伝統的なお酒のことです。通常の日本酒は20日から40日ほどで発酵させますが、ここでは雪の積もる1月から約200日もかけてゆっくり造ります。とろりとして濃くて甘い味が特徴で、村の人々は山の神様に豊作の願いを込めて奉納します。神社で盃を買った見物客にもこのどぶろくが振る舞われ、何杯でも自由にお代わりして楽しむことができます。
大分県豊後大野市の柴山八幡社で行われる「ひょうたん祭り」には、さらにユニークな神様が登場します。緋色の衣装を着た神の化身「ひょうたん様」は、長さ80センチのひょうたんを頭にかぶり、首にも5.4リットルの神酒が入ったひょうたんを下げています。足には片足だけで重さ10キロ、長さ130センチもある巨大なわらじを履いているため、自分の力だけでは歩けません。そのため、手伝いの人にロープで持ち上げてもらいながらゆっくり進みます。沿道で見物客がおちょこを差し出すと、ひょうたん様は笑顔でお酒をなみなみと注ぎ、病気にならず元気でいられるように無病息災を祈ります。
愛知県豊川市の牛久保八幡社で開かれる「うなごうじ祭」は、お酒に酔った人々の姿をユーモラスに再現する祭りです。約500年前の戦国時代、領主からお城でごちそうやお酒を振る舞われた村人たちが、帰り道ですっかり酔っ払って寝転がった出来事に由来しています。祭りでは、「ヤンヨウガミ」と呼ばれる神様役の男たちが路上で輪になり、ゴロゴロと横たわります。仲間に手を差し出してもらうまでは自分から起き上がってはいけないというルールがあり、その面白い姿が観客の笑いを誘います。神様と一緒にお酒を飲んで笑い合うこれらの祭りは、地域の人々の絆を深める大切な伝統となっています。