イタリア南部のヴェスヴィオ火山の北麓にあるソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡で、東京大学の調査チームが古代ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスの最期の地とされる壮大な別荘跡の解明を進めている。この遺跡は西暦79年の大噴火で有名なポンペイとは山の反対側に位置し、かつて「アウグストゥス帝終焉の地」と文献に記録されていた場所と一致する。
2002年に始まった発掘の初期、発見された建造物は2世紀ごろのものと推定され、一度はアウグストゥス帝との関係が否定されていた。しかし2019年、その下からさらに古い巨大な建物が見つかった。この建物を壊した火砕流が西暦79年の噴火によるものと判明したほか、巨大な浴場を思わせる7基の「かまど」が見つかり、強大な権力者の別荘であった可能性が高まった。
また、この調査は自然災害と人間社会の関わりを解明する「災害考古学」の視点からも注目されている。通常、ローマ時代の遺跡は噴火で被災すると放棄されることが多いが、ソンマ遺跡では古い建物を土台にして新しく建て直す復興が行われていた。皇帝ゆかりの土地という魅力があったからこそ、災害が起きても人々が戻り続けたと見られている。
30年以上にわたって現場で発掘を続ける岩城克洋・特任研究員らの地道な作業は、ベネチア国際映画祭で賞を受けたドキュメンタリー映画『ポンペイ、雲の下に生きる』でも描かれた。研究チームは今後、建物の所有者や用途をさらに解明し、アウグストゥス帝終焉の地であることの証明を目指している。