アドベンチャーゲーム『モンキー・アイランド』に登場する「グロッグ」は、金属を急速に溶かす恐ろしい海賊の飲み物です。作中では金属製のジョッキに注ぐとジョッキが徐々に溶けてしまうため、完全に消滅する前に別のジョッキへ移し替えながら運ぶというパズルが有名です。この「金属を溶かす液体」が現実の化学で再現できるのかについて、研究者のラッファ氏が真面目に検証しました。
ラッファ氏はまず、ゲーム内でジョッキにグロッグを入れてから穴があいて消滅するまでの時間を計測しました。その結果、ジョッキの寿命は約35秒でした。ジョッキの材質はスズを主成分とするピューターであると判断し、厚さを2mmと仮定した上で、「厚さ2mmのスズを35秒で貫通させるにはどれほど強力な酸が必要か」を計算しました。
計算によると、この腐食速度を達成するために必要なスズの減少速度は、過去の実験で確認された薄い酸による腐食の約15万倍に達します。さらに、水溶液中の水素イオンの拡散だけでこの反応を支えるには、1リットルあたり約383モルという濃度が必要になります。これは98%の濃硫酸が持つ水素イオンの量の約10倍に相当する非現実的な数値です。
ただし、この計算は液体が動かない状態を想定しており、走って液体が揺れることで反応が速まる可能性や、未解明の成分「SCUMM」が強力な酸化剤として働いている可能性も考えられます。また、牢屋の鍵が2秒足らずで壊れる現象についても、内部の薄い部品だけが短時間で侵食されたと説明できます。ラッファ氏は、通常の酸による腐食だけではゲーム通りの挙動を説明できず、現実を大きく超えた未知の化学反応が必要であると結論づけました。