中国の自動車メーカーが、電気自動車(EV)を中心とした輸出拡大と高度な「知能化」技術を武器に、世界市場で存在感を急激に高めています。2023年に自動車輸出台数で日本を抜いて世界一となって以来、中国は首位を維持しており、2026年1〜7月の輸出実績も614万台と大幅な増加傾向が続いています。国内市場の価格競争激化や成長減速を背景に海外進出を加速させる中国勢は、東南アジアや欧州、さらには日本市場にも急速に浸透しつつあります。
中国車の躍進を後押ししているのは、部品や設備メーカーの能力向上による品質の改善です。最大輸出企業である奇瑞汽車は、トヨタのモノづくりに学んだ生産管理を強みとし、日本のオートバックスセブンとの合弁会社設立や日産の南アフリカ工場の買収など、日本企業との連携や事業継承を通じて海外基盤を強固にしています。かつて日本が優位を誇っていた車両の製造技術や生産スピードにおいて、中国企業は急速に競合としての力を付けています。
さらに大きな構造変化をもたらしているのが、通信大手ファーウェイをはじめとするIT企業の自動車産業参入です。同社は自社で車両を製造せず、複数の自動車メーカーに生産を委託しながら、自動運転やAIを搭載した「インテリジェント・コックピット」など高度なシステム開発を主導しています。この新たなビジネスモデルは自動車メーカーの役割を変容させており、製品の差別化を図るためトヨタなどの日本メーカーも中国限定車種でファーウェイの車載OSを採用するなど、対応を迫られています。
一方で、米中対立や経済安全保障を巡る緊張関係から、主要市場ごとの開発体制を分離する「デカップリング」の動きも広がっています。米国市場を重視する日本の自動車メーカーは、安全保障上の制約がある技術の扱いにおいて慎重な対応を講じつつ、グローバルな競争力をいかに維持するかが問われています。品質向上とデジタル技術の進化を背景に、世界自動車市場における日中の主導権争いは今後いっそう激しさを増す見通しです。