2026年、日本の「ショートショート」の第一人者である作家・星新一の生誕100年を迎えました。原稿用紙10枚ほどの短い文章で奇想天外な物語を描く星の作品は、世代を超えて多くの読者に愛され続けています。代表作『ボッコちゃん』や『おーい でてこーい』をはじめ、現代のAI(人工知能)やインターネット社会を予見したかのようなストーリーも多く、全国の書店やメディアで特集が組まれています。
星は生涯に1001編以上の「ショートショート」を執筆しました。作中には時事風俗や固有名詞がほとんど登場せず、時代が変わっても色あせない普遍性を持っています。生成AIとのコミュニケーションを思わせる『肩の上の秘書』や、ネットワーク社会を先取りした『声の網』など、数十年前に書かれたとは思えない先見の明が、今なお新しい読者を引きつけています。
評伝『星新一 一〇〇一話をつくった人』を著したノンフィクションライターの最相葉月さんによると、星の発想力には「東洋一の製薬王」と呼ばれた父・星一の進取の精神が大きく影響しているといいます。また、20歳で終戦を迎えた経験や、その後の「空白の6年」と呼ばれる苦難の時期を経て、「日本空飛ぶ円盤研究会」などの集まりでSF仲間と出会ったことが、作家デビューのきっかけとなりました。
今年は未発表の作品『聖地』が発見されるなど、没後もその才能が再評価されています。最相さんは、遺品の中に大量の構想メモや下書きが残されていたことを挙げ、AIで瞬時に生成できる時代とは対極にある「生みの苦しみ」があったと述べています。生誕100年を機に、星新一の作品世界に改めて注目が集まれています。