博物館や市場で販売されている古代の陶器が、本物か精巧な偽物かを科学的に見分ける新しい方法が考案されました。アメリカのスクリップス海洋研究所のヨアフ・ヴァクニン氏らの研究チームは、地球の磁場によって陶器に残るわずかな「磁気」の性質に着目し、加熱したときの変化から作られた時代を判定する技術を発表しました。
陶器は窯で焼かれて冷えるとき、その時代の地球の磁場の向きを記録します。これを「熱残留磁化」と呼び、年代測定に利用されてきました。しかし、作られてから長い年月が経つと、粘土に含まれる鉱物が新たな磁力を帯びる「粘性残留磁化(VRM)」が発生します。研究者たちはこれまで、この粘性残留磁化を測定のノイズと見なしていましたが、ヴァクニン氏らは逆にこの現象を偽物を見分ける手がかりとして利用しました。
実験では、古代ユダヤの王家のつぼや現代の窯で焼かれた陶器など、さまざまなサンプルを少しずつ加熱して粘性残留磁化が消える温度を調べました。その結果、作られてから1000年以上が経過した古代の陶器では、粘性残留磁化を除去するために最低でも約112℃まで加熱する必要があることが判明しました。一方で、現代に作られた新しい陶器は、より低い温度で磁化が消失しました。つまり、磁化が消える温度を測定すれば、その陶器が真の古代遺物なのか現代の偽物なのかを判断できます。
この技術は、すでに実用的なテストも行われています。研究チームがイスラエル考古学庁の保有する真贋が不透明だった3点の粘土製遺物にこの手法を適用したところ、すべて古代に製造された本物であることが裏付けられました。現在、遺跡の略奪や偽造骨董品の不法取引は世界中で問題となっており、研究チームはこの技術が博物館の展示保護や法執行機関による違法取引の取締りに大きく貢献すると期待しています。