日本の地域社会を支えてきた神社や寺院が、人口減少や過疎化に伴う経営難から深刻な存続の危機に直面しています。2026年8月には、清和源氏の発祥の地として知られる兵庫県の多田神社が金銭トラブルから経営難に陥り、近畿地方の神社として初めて倒産しました。文部科学省のデータによると、国内にあるおよそ18万の宗教法人を支える信者の数は、2007年の約2億659万人から2024年には約1億7505万人へと急減しています。2040年には全国の宗教法人の3分の1以上が消滅する可能性が指摘されており、地域の葬儀や法事が行えなくなる懸念も広まっています。
こうした状況のなか、寺院の維持に向けた新たな収益源を模索する動きが活発になっています。和歌山県那智勝浦町にある1200年の歴史を持つ大泰寺では、檀家の減少や後継者不足により、住職が4つの寺を兼務せざるを得ない状況が続いています。そこで同寺は7年前から外国人観光客向けの宿坊事業を開始しました。元英語教師の住職が英語で写経や座禅を指導する取り組みが人気を集め、現在では宿泊者の約9割を外国人が占めるなど、運営を支える不可欠な柱となっています。一方、世界遺産の高野山でも宿坊が重要な収益源となっていますが、一部の寺院で税金の申告漏れが指摘されるなど、透明性のある運営も求められています。
観光地以外の都市部でも、地域に根ざした独自の試みが始まっています。大阪市西淀川区の西栄寺では、僧侶が介護福祉士などの資格を取得し、「お坊さんヘルパー」として隣接するデイサービス施設で勤務しています。施設ではお菓子を片手に死について語り合う「デスカフェ」を催すなど、寺ならではの安心感を提供しており、利用者の約3分の1がその後の葬儀などを同寺に依頼する良好な関係が生まれています。僧侶らは「時代の変化に応じて寺の役割も変えていく必要がある」と語ります。
さらに、本業以外の事業を組み合わせて生き残りを図る住職も現れています。兵庫県加古川市の照徳寺では、住職が「坊主カフェ」の経営と国家資格を持つ鍼灸師としての診療を兼務する“三刀流”のスタイルを取り入れ、市民との縁を広げながら寺の維持を目指しています。人口減少や宗教離れが進むなか、全国の神社仏閣は従来のあり方にとらわれず、それぞれの地域の実情に合わせた新たな道を模索し続けています。