1990年代半ばから2010年代序盤にかけて生まれた「Z世代」の若者が、職場で深刻な燃え尽き症候群に直面しています。イギリスの調査では対象となった若者の80%、また国際的な幸福度調査でも18歳から24歳の98%が、燃え尽き症候群を経験したと報告しました。カナダのゲルフ=ハンバー大学で社会福祉学を教えるニティン・デッカ氏は、若い労働者が過度なワークライフバランスを求めていると片づけるのではなく、職場の問題点を知らせる警鐘と捉えるべきだと指摘しています。
デッカ氏によると、若い世代が燃え尽きやすい背景には、個人の弱さではなく三つの大きな要因があります。第一に、多くの若者が新型コロナウイルスの流行中や流行後に働き始め、人との距離を取る生活の中で同僚との日常的な交流が減り、職場で孤立しやすくなったことです。第二に、生活費や住宅費の高騰、不安定な雇用といった経済的な重圧が、社会に出たばかりの若者に大きな負担を与えていることです。そして第三に、AIの普及やハイブリッド勤務によって仕事の構造が変わり、周囲とのつながりや仕事の文脈が失われやすくなっている点です。
研究者らによると、燃え尽き症候群は「仕事への期待」と「実際の業務の要求」にずれが生じたときに起こります。過剰な業務量やスキルの不足などから、まず強い疲労を感じ、続いて仕事への無関心や冷笑的な態度が生まれ、最終的には達成感や自信が低下していきます。対策として、会議の後に同僚と雑談をしたり、週に一度コーヒーブレイクの時間を作ったりして孤立を防ぐことや、カレンダーで私生活との境界線をしっかり分けることが挙げられます。しかし、デッカ氏は個人による工夫だけでは限界があると説明します。
より根本的な解決には、雇用主や職場による取り組みが不可欠です。具体的には、メンタルヘルスの支援や柔軟な働き方を提供し、管理職が従業員の仕事を明確にして、過剰な業務量がないかを確認し、再配分するルールを整えることが求められます。デッカ氏は、AIが台頭する時代だからこそ、職場をより人間味のあるものに変えていくことが大切だと述べています。Z世代にとって働きやすい職場をつくることは、最終的にすべての人にとって働きやすい環境へとつながるのです。